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あたしは、何不自由の無い家庭に生まれ、たいした怪我や事故も無く14年生きてきた。
幼稚園も、小学校も、出会った人たちは変わっている人はあまりいない。
変わっているとしても、性格上の問題くらいだ。
この中学校も、出会った友達は割と普通の子ばかりだった。
今度編入してきた、あの人に出会うまでは…
もう一人の自分 (第壱話)
今日も私は朝食のパンを口にくわえ、仲良しのヒカリと一緒に登校している。
そして、登校途中に腐れ縁のレイが合流して、今流行のファッションや、
人気のケーキ屋さん。最近のニュース、さらにはいい男の話をしながら登校するのがいつものパターン。
そして、今日レイが切り出した話はいつもと違った。
「今日、転校生が来るそうよ」
「え、それ本当?どんな人かな〜?ルックスいいといいけど」
「アスカ…この間、お姉ちゃんに紹介された人見て幻滅したくせに…でも、実際どんな人かしら」
レイの話に、あたしとヒカリが興味を示すのもわけなかった。
漫画なんかだとこういうとき転校してくる奴は美形…と、期待したいもの。
でも、現実は厳しい。世の中そんなに甘くは無い。
「みんな、おはよう。今日は転校生を紹介します」
担任の葛城先生の声の後、教室に入ってきたのはあまりパッとしない男の子だった。
クラスの何人かの女子からもため息が聞こえる。
そう。今朝のように盛り上がった期待は裏切られたわけだ。
「…碇シンジです、よろしく…お願いします」
「それじゃあ、惣流さんの隣に座ってもらそうかしら。あそこの席よ」
「あ、はい」
先生に言われるままあたしの側にきた転校生をもう一度見てみた。
やっぱり印象の薄い子だった。さっきの挨拶の仕方、
ここまで来た歩き方。おどおどした態度。あまり好きになれなかった。
「…よろしく。惣流さん」
「ええ、こちらこそ」
表面上では気のいいふりをする。まあ、転校した来たばっかなんだし。
多少気が重くなって緊張するのは当然といえば当然か。
「それじゃあ、最初の授業は…碇君の質問タイムから始めちゃおっかなぁ?」
「…え?」
隣の碇君は、多少驚いた表情で葛城先生を見ていた。
そりゃ、こんなこと言われたら無理も無い。
でも、そういう性格の人なのだ、この先生は。
「それじゃ、まずはどんな質問が出るのかなぁ?それじゃ、窓側から質問どうぞ〜」
ワクワク…そんな擬音が頭の上に乗っかってるような顔をしている先生。
心底、こういう状況が気に入った様子だ。
「碇君。以前はどこの中学にいたの?」
「あ…えっと、大阪の学校にいました」
「目の学校で部活動、どこに入っていて、今度はどこに入ろうとしているのかな?」
「えっと…以前は、サッカー部に所属していました。
…今はどこに入るのか、まだ決めていません」
「特技とか、ある?」
「一応、5歳の時からチェロをしています」
…いきなりの質問攻めに、最初は戸惑ったみたいだけど、
だんだん慣れて来たのか、碇君は徐々にスムーズに答えていった。
「それじゃあ、こっちに来た理由って何かな?」
「え……まあ、その…父親の仕事の理由ってところ…かな?」
その時、碇君の顔色が変わって…あたしには、
なぜか彼がその質問だけ、回答を迷ったような気がした。
「はいはい。質問はこのくらいにして…授業に入りま〜す。
ああ、そうそう。惣流さんは碇君に教科書見せてあげて。
彼、まだ教科書買ってないからね」
「はい」
がたがたと机を碇の隣にくっつけ、彼に教科書を見せる。
「あ、ごめん」
「いいわよ。教科書ないんじゃ、何もできないもの」
彼は、申し訳ないといった顔をしていたが、
私にはもちろんどうでもいいことだった。
「…はい。今日の授業はこれでお終い。それじゃねん♪」
最後も、教師としては軽そうな挨拶で葛城先生は去っていった。
と、同時にクラスの何人かがあたしの周りに…いや、碇君の周りに集まった。
もちろんさっきの授業では聞けなかった、プライベートでの質問だろう。
彼は困っていた様子だけど、とりあえず周りがうるさかったので教室を出た。
「あ、アスカ」
廊下では、ヒカリとレイが待ってましたといわんばかりに私のところに来た。
言い忘れたけど、ヒカリとレイはクラスが残念なんだけど違うの。
「どうどう?噂の転校生君。どんな子だった?」
「…見てのとおりよ」
後ろ指をさし、ヒカリやレイに見てみなさいとジェスチャーする。
「…カッコイイというより、可愛いって子かな?」
「そう?あたしはいいと思うけど」
ヒカリは気持ちが冷めたみたいだけど、レイは違う反応だった。
「レイ…ああいうのが好みなの?」
私とヒカリはじとりとレイを見やった。
「見た目の問題よ。まだ性格知らないし…アスカ、仲介してくれる?」
レイは、やはり興味があるらしい。
「嫌ですよ。なんであたしがそんな面倒なこと…」
「…フルーツパフェ奢るわ」
面倒なことは嫌だ…たしかにそうなんだけど、
その一言はあたしの心を揺さぶるには充分だった。
「乗った!」
「アスカ…」
フルーツパフェ一つで約束したあたしに、ヒカリは頭を手で抑えた。
とまあ、あたし達はいつもこんな調子。今日もあいかわらずね。
「アスカ、昼休みになったことだし、転校生の…碇君だっけ?
一緒にお昼食べてもいいんじゃない?」
「え〜、わざわざ?」
「ダメよ、アスカ。クラスメイトとして、隣の席の者として、
それはしないといけないわ。私たちも付き添うし…」
「うう…」
2対1。どう考えてもあたしの負け。
悔しいな〜この国の多数決方式。
いっそ10年後にそういう考えを一掃しちゃおうかな?
まあ、それはおいといて…とりあえずあたし達は転校生君を探した。
「ねえ、碇君」
「え?な、何かな?惣流さん」
案の定彼は一人で持参のお弁当を食べようとしていた直後だった。
「君、転校してきたばかりだからさ、友達の一人もいないじゃない?
あたし達と一緒に、中庭で昼食、食べない?」
「え…ええ?僕と?」
「うん。それとも、女子と食べるの恥ずかしい?」
「い、いや…その…そういうわけじゃ…ないけど」
彼の動作は、どうみても恥ずかしがっていないといった動作ではなかった。
一言で言えばウブなのだ。でも…なにか違うとあたしはその時思った…
「まあ、まあ…気にせず、行こう行こう」
「わ…わ、ちょ、ちょっと〜」
嫌がる彼をあたし達は無理やり中庭に連れ出していった。
「…………」
「…碇君。なに黙ってるの?」
彼は、あたし達三人に何か話すわけでもなく、
黙々とお弁当を食べていた。
レイが思わず彼に聞いた。
「何か、お話でもしようよ。気楽にさ」
レイは笑顔を彼に見せ、出来るだけ緊張を解こうとしたみたいだけど…
結果は変わらず、何にも反応してくれなかった。が、ようやく彼は口を開いた。
「いや…こうして、女の子と一緒に食事するのって…あんまりないから」
「…まあ」
赤面する彼に、クスッとヒカリは笑った。
「そうなの?じゃあ、碇君を誘えたあたし達はラッキーガールってところかなぁ?」
レイはわざとおどけてみせた。
「いや、その…そんなふうに言われると…その」
「ほらほら、碇君。そんなに堅くならないの。案外話したんだから、
もうあたしたちが彼方の友達よ」
あたしは碇君の背中をバシバシと叩いて、緊張をほぐしてやった。
「あ、ありがとう。惣流さん」
口に食べ物を入れていた時に叩いてしまったせいか、
彼は多少咽たが、ようやく笑顔を見せた。
「友達なんだし、その『さん』付け、どうにかなんない?
なしでいいよ。その代わり、私も呼び捨てにするからね」
ヒカリもレイも、目で彼に「自分も『さん』付けしなくていい」と言っている。
「え…その…なんか悪いよ、会って間もないのに…」
「気にしないの。ほら、言ってごらんなさいよ」
「…惣流」
「名前で呼んでくれる?下の名前はアスカだよ」
「ええ?…その…あの」
「「「…あはははは」」」
彼の初々しい反応に、あたしたちは高笑いした。
「本当、彼方面白いわ。改めて自己紹介するわ。惣流・アスカ・ラングレーよ」
「私は洞木ヒカリ。碇君の隣のクラスの委員長でもあるの」
「綾波レイ。あたしはヒカリと同じクラスだから、隣ですぐ会えるわ」
「…ありがとう。気持ちは嬉しいんだけど…でも」
一区切りの言葉。そして暗い表情を見せた彼の次の台詞はこうだった。
「僕に、もう構わないでほしいんだ。君達の好意を
踏みにじるようなこと言って悪いけど…」
そう言って、彼は返事をあたし達の待たぬまま校舎に消えた。
「…なんなの?あの碇って奴は」
多少好感を持ったのに、あたしの気持ちは一気に冷めた。
「碇君、いったいどうしたのかしら?」
「あたしたち、なにか悪いことしたかなぁ?」
彼の答えは、あたし達三人にわずかながら不快感を抱かせた。
せっかく仲良くなってあげようとしたのに、こう言われては嫌な気分にもなる。
結局、放課後まであたしも彼と口を聞かなかった。
「はい。今日の事業はここまでにしましょうか」
チャイムも鳴り、バラバラと生徒が帰る中、碇はなにやら急いだ様子で教室を後にしていた。
親切にしたのにも関わらず、それを拒絶した彼。でも本心ではない…
なんとなくそう思った私はこっそりと後を追っていた。
「…ちくしょう」
彼は人気の無い校舎の端に来て、漏らした声はそれだった。
「せっかく…友達になってくれるって言ってくれたのにな…まあ仕方ないか…くっ」
すると、突然左手をしきりに抑えた。
左手を怪我しているのかな…昼、見た限りではそうは見えなかったけど…
「…ははは…今日も…抑えるのに…大変だった…よ!」
最後の言葉を強く言った瞬間、彼は…
右手で左手を抑えて、その常態のまま壁に何度もぶつけ始めた。
あたしは頭が真っ白になった…彼の行動が理解できなかった…
彼は一体何を言ってるんだろう…抑えるってなんなの?
なぜ腕を壁なんかにぶつけるの?
なんだか放っておけない…そう思ったら…あたしの口はすでに開いていた。
「…何してるの?」
「…え?」
突然のあたしの登場に、碇は本当に驚いた様子であたしを見やった。
「………見たの?」
「ええ…なんなの?いったい何してるの?」
「…僕のことはほおっておいてくれ。昼にも言ったよ」
「あ、待ちなさいよ]
後ろに向きを変え、帰ろうとする碇の肩を思わず引っ張った…その時だった。
「あ…触わらないで!」
左頬に痛みが走り、あたしは後ろに倒れた。一瞬理解できなかったけど、悟った。
碇が…あたしを左手の甲で殴ったんだ。
「あ…ああ…あうぅ…」
碇は…左手と、あたしを交互にを見つめたあと、顔が真っ青になった。
「ご…ごめん!」
そう言って、碇は走って階段を下りていった。
…暫く、なにがなんだか分からなかった。
そっと、左頬に手を当ててみた…腫れている。
男子に殴られたのは、それが初めてだった。
シンジ「わ、わ、わ。ぼ、ぼぼぼ僕がア、ア、アスカををを…」
デニム「お、落ち着いてください」(^^;
シンジ「こ、これが…お、落ち着いていられますか〜」(汗)
デニム「…錯乱していらっしゃる」(^^;
シンジ「ど、どこかに…か、隠れないと…こ、殺され…ア、アスカ」(@@
アスカ「…心配要らないわ。二人とも…一瞬で済ませてあげるから」(ーー#
デニム「…私も入ってる?」(^^;
シンジ「ひ、ひぃ」(TT)
アスカ「対人型プログレッシブナイフ〜!!」
デニム「…お先に失礼しますね」(ダッシュ)
シンジ「あ、ま、待って〜」(TT)
…なんか某HPのあとがきみたいですいません m(_ _)m
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namiko-w@axel.ocn.ne.jp
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