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届かない恋
ここは、どこかの国の大きなお屋敷。その一室に一人の女性がいた。
「うう〜ん」
どうやら、目を覚ましたようで、目をこすりながら服を着替えた。姿はまだ外が暗くて見えない。
「お嬢様、失礼いたします。…おやおや、お目覚めですかな?」
おきてからすぐに、部屋に初老の男性が入ってきた。
「ええ。なんか、急に目が覚めたの」
「そうですか。今日はよい1日だといいですね」
「ワクワクしています。月に一度の外へ出れる日ですからね」
「いつもこの日を楽しみにしてらっしゃいますが、何か特別な事でも?」
男性…執事と思われるが、お嬢様、そう呼んだ人へ聞く。
「特にありませんわ。でも、私の知らない世界が見える、それだけで楽しいのです」
「そうでございますか。では、お食事の時間になりましたら、どうぞ下へ」
「分かりましたわ。準備をするので下がっててくれますか?」
「かしこまりました」
執事はぺこりと頭を下げ、部屋を出て行った。
「ふう…」
と、ため息をつく。とても今の生活には満足していないと、このお嬢様の顔で分かる。
「あの…失礼します」
執事が出て行った扉から、一人の女の子が入ってきた。
「アスカ様、お布団を直しに来ました」
その子はエプロン姿で質素な帽子や服装である。いかにも使用人といった格好だ。
黒い髪はみつ編みをしており、頬にはそばかすが多少ある。
「ヒカリ、ここには私達二人しかいないのです…いつも通りに呼んでね」
アスカ…惣流・アスカ・ラングレー。この屋敷の主の娘である。
彼女は栗色の髪、透き通るような青い目、ふもとの町からでは女神とも呼ばれている、知る人はいないとされる美人である。
だが、その素顔を見る人間は少ない。
一歩前に出て、ヒカリと呼んだ使用人に歩み寄る。
「あ、そうね、ゴメン」
ヒカリはそう言って布団をたたみ始める。
「アスカ、今日はふもとへ降りれる日でしょ?楽しみなんじゃない?」
「ええ、もちろん。ヒカリもでしょ?」
アスカと少女…洞木ヒカリはお嬢様と使用人という立場だが、親友同志の関係にあった。
数少ない同い年の子ということもあったし、気軽に話し掛け、悩み事を話せるほどになっている。
「たしか、ふもとの町に幼馴染の恋人がいるとか…」
「ち、ちがうよ、アスカ。ト、トウジとはそんなんじゃ…」
アスカのからかいに、ヒカリは顔を赤くし、目線を下げる。
「はいはい、どうしてそいつが好きなのかは知らないけど、ちゃんと気持ちは伝えないとね」
「う、うん…」
ヒカリの頷きに満足したのか、アスカは布団に腰掛けた。
「ふう…それにしても、どうしてヒカリと同じ身分で生まれてこなかったんだろう…」
「しかたないよ。生まれの違いだし…アスカはこんなとこにいられるだけましじゃない?」
「ぜんぜん…窮屈なだけよ。それに、自由なのも…月一回のふもとのお祭りぐらいだし」
「じゃあ…ゴニョゴニョ…どう?」
「ヒ、ヒカリ…すごいこと言うわねえ」
アスカは汗をたらして退いている。
「あれ、そう?」
「そうよ…」
「でもねえ、それじゃいつまでたっても…」
「だからって…いくらなんでも…」
二人の口論はしばらく続いた。
「…あれ?もうそんな時間?」
二人にしてはたった数分と感じているようだが、実際はもっと時間が経っている。
「ほら、早く行かないと、また遅れた事で料理長にどやされるわよ?」
「あわわわ…じゃねっ!!」
ヒカリは猛スピードで扉の先に消えた。…布団を抱えて。
「…あんな動きにくい服装でしかも布団を持ってよく走れるわね…さて、あたしもそろそろ行こうかな」
アスカは立って食堂を目指した。
《食堂》
「「「「「おはようございます、アスカ様」」」」」
料理長他、屋敷の者が挨拶する。
「ええ、いつもご苦労様です、皆さん。料理長も大変でしょう」
「とんでもございません。そう言われてもらっただけでも私は嬉しく思います」
料理長は頭を下げる。
「…お父様は?」
「もうすぐ、お帰りになると思います。それまでに、食事を済ませてはいかがでしょうか?」
今朝いた執事が応える。
「分かりました。…では、皆さんも席についてください。ごいっしょにいかがですか?」
「…皆さん、お嬢様がこう言ってらっしゃる。どうでしょう?」
「分かりました。他の者の食事も運んできましょう」
料理長が厨房に入っていき、数人の使用人がついて行く。しばらくして、全員が席に着いた。
「それでは、頂きましょう」
アスカの号令で皆、食事を済ませた。
《廊下》
「それにしても、アスカ様ってやっぱりやさしいわねえ」
「そうよねぇ。私達にまで食事を勧めてくれて…」
「おいしかったなぁ。あれ…」
「それとさぁ、アスカ様、今日ふもとの町に行くのよね」
「はあ、私も行きたいなぁ…」
「一度は注目浴びたいわよねぇ」
数人の使用人が喋っている。これはこの屋敷ではたいして珍しい事ではなく、屋敷の者もたいして注意はしない。
なれた光景という物だ。最初は注意をしていたのだが、屋敷の主のハインツやその妻のキョウコ、娘のアスカは別に気にしておらず、
何も言わないので結局はこのままとなっている。
「何してるの?」
そこへ、ヒカリがやって来た。
「ああ、洞木さん?今、ふもとの町のことで話してるのよ」
「あ、たしか洞木さんもついていくのよね…もうすぐ時間じゃない?」
「もう少し余裕あるわよ」
「そう?ねえねえ、アスカ様ってふもとに下りるのをいつも楽しみにしてるじゃない?」
「え?う、うん…」
「アスカ様、どうして楽しみにしてるか、知らない?」
「ううん…詳しくは知らないわ」
「そうねえ…アスカ様って時々何を考えてらっしゃるのかわかんないもんねえ」
「もしかして、普通の生活がしたくて家を出たいとか?」
「ちょっと、それってシャレになんないんじゃないの?」
「あ、そっか…でも、外に出ている時が一番いい顔しているように見えるけど…」
「「「う〜ん」」」
「…お〜い、そろそろ時間だ、いいかげんちゃんとしてくれよ」
「「「!!…は、はい」」」
一人の男性に言われ、素早く掃除を始める使用人たち。よほど長く話していたんだろうか?
「じゃあ、あたしはこの辺で失礼するわ」
「じゃあ、家族によろしく伝えといてね」
「ええ。じゃあね」
ヒカリは玄関に向かった。
デニム「さて、HPが出来て初めてのSSですが…」
シンジ「…僕の登場はいつだろう?」
デニム「もうちょっと待ってくださいね」
シンジ「まあ、いいですけど。ところで、どうしたんです?全然SSはかどってないそうですけど?」
デニム「…忙しいのに加えて…スランプらしいです」
シンジ「どうにかしてくださいよ」
デニム「まあ、頑張ります。次回もお楽しみに」(^^)
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