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人形みたいな女の子2
「はぁ…はぁ…もうすぐ…もう…す…ぐ」
暑い夏ももうすぐ終わり、爽やかな風も出てきています。
そんな日に、なにやら息を切らして歩いている人影があります。
その子の名前は惣流・アスカ・ラングレー。
地元では有名な超虚弱体質の女の子です。
「いそが…ないと…おくれちゃう〜」
アスカは本当に急いでいました。
それは彼女のボーイフレンド、碇シンジ君との初デートの約束をしていたからです。
しかし上陸しかけている台風のせいか、思うように前に進めません。
といっても、彼女以外にはなんともない風なのですが…
「あ…もう…だめ…あ〜〜〜」
ぴゅ〜〜〜……………がしっ!
ついに力尽きてしまったアスカは突風に飛ばされてしまいましたが、
その彼女を誰かが受け止めてくれました。
「…大丈夫?惣流さん」
「あ…いかり…くん…?」
そう、彼女を支えてくれていたのは紛れも無く碇シンジ君でした。
「ごめんね。ちょっと遅れちゃったんだ」
「…ううん…わたしも…さっき…きたところ…だから」
見ればアスカはシンジ君に抱っこされていました。
それに気付いたアスカの顔はすでに真っ赤になっています。
鈍感なのか、気に止めていないシンジ君は彼女をゆっくりと降ろしました。
「とにかく、会えてよかったよ。行こうか?」
「…うんっ!」
元気良く笑顔をシンジ君に見せると、
二人は仲良く今日のデートコース、水族館に向かいました。
「うわぁ…惣流さん。見てごらんよ」
水族館に来て、最初に見たものはイルカでした。
「あんなに元気に泳いでるよ。見える?」
「うん…ほんとう…きれいないるかさ〜ん」
「そうだね…でも、惣流さんも綺麗だな」
…ぽっ
碇君のその何気ない言葉に、アスカの顔はまた真っ赤になります。
「え…そ、そんな…こと…ないよ…」
「そうかな?僕は惣流さんは可愛いと思うよ?」
にっこりと微笑みを浮かべるシンジ君に対し、
アスカはただただ顔を火照らせるばかりです。
「あ、あっちにいるのは何かな…惣流さん、行こう?」
「あ…はい…」
恥ずかしい思いで一杯のアスカは、その後も生返事を繰り返していきました。
「ふう…惣流さん。ちょっと休憩しようか。
歩きどうしでちょっと疲れちゃったでしょ?」
「え…そんなこと…ないよ…」
アスカは大丈夫だとシンジ君に笑顔を見せます。
「やせ我慢しなくていいよ」
そう言ってシンジ君はしゃがむと、アスカの足に触れます。
「ほら、足がむくれちゃってる…僕に気を使ってくれたんだね…
僕もすごく嬉しいけどさ、あまり無理しないでほしいな」
「あ…その…ご…ごめん…なさい…」
アスカは心の内をシンジ君に見透かされて、
恥ずかしさのあまり声も小さくなってしまいました。
「怒ってるわけじゃないよ。でも、もう少し僕には弱いところも見せて欲しいな。
あ、何かジュースでも買ってくるよ。そこで休憩しててね」
シンジ君はアスカを休憩所の椅子に座らせると、
近くの自動販売機に向けて走っていきました。
「いかりくん…やさしいなぁ…」
強い面も、優しい面も新たに確認したアスカは、
ますますシンジ君を好きになりました。
「わたし…なんかで…いいのかなぁ」
同時に、起こる不安。
こんなに素敵な男の子が自分の彼氏。
喜ばしいことなのに、なぜか胸がざわつきます。
「惣流さん、はい。オレンジジュース」
「あ…あり…がとう」
ジュースを受け取って、アスカは俯きます。
「あれ…りんごジュースのほうが良かったかな?」
「え…ううん…そんなわけじゃ…ないんだけど…」
お互い、ジュースを少しずつ飲んではいますが、
いっこうに喋りだすことができません。
それどころか、なぜか重苦しい空気になってきています。
「…あの…さ」
「あ…な…なにか…?」
「…もしかして、楽しくなかった…かな?
僕がいろいろ話してる時も生返事だったし…今も…なんか沈んでるし…」
シンジ君は、顔は笑顔ですが、
どことなく少し辛そうな表情です。
「あ…その…ち…ちがうんです…あの…」
シンジ君がそう思ってるとは全然考えていなかったので、
アスカはもう頭の中はパニック状態です。
このままでは本当に暴走してしまいます。
「わたし…ずっと…はずかしかったんです…いかりくんに…てを…ずっとにぎられてて…
それに、いかりくん…すごくいいひと…だから…わたしなんか…かのじょで…いいのかな…って…」
アスカはまた顔を真っ赤にして俯いてしまいました。
すると、シンジ君は表情を和らげて答えました。
「惣流さん、僕は惣流さんはすごく素敵だと思ってる。本当だよ。
逆にね…惣流さんみたいに可愛い人を恋人に出来て…
本当にいいのかな…って僕も思ってるんだよ」
「え…そ…そんな…わたし…なんて…」
「…どんな人にだって、弱いところはあるよ。
惣流さんは他の人より強いところもあるし、
実際弱いところもあるんじゃないかな?」
「…わたしは…つよく…ないです…」
「そう…?でも、さっきは足が痛いのを必死で我慢して、
僕の歩調に合わそうと努力してくれたじゃないか。そういうの…すごく、尊敬するよ」
「え…あ…その…」
今まで、あまり誉めてもらったことのないアスカにとって、
あまりない経験から、どう反応していいのか分かりません。
「…もう立てる?」
「え…はい…」
「…充分見学もしたし…帰ろうか?」
「…うん」
最後は、お互い顔を火照らせたまま
水族館を後にしました。
「…今日は本当にごめんね」
「ううん…すごく…たのしかった…です…」
「本当…?」
「はい…で…その…」
もじもじと体を動かすアスカに、シンジ君は
なにか言いたいのかな…と思ったのでしょう。
正直に聞きました。
「…なにか、忘れ物かな?それとも、
まだイルカとか見たかったのかな?」
「ううん…ちがうの…あの…その…おねがいが…あるの」
シンジ君の心遣いに、アスカは
今度は誤解があってはならないと思っているようです。
「あの…なまえで…よんで…ほしい…な…」
「…え?」
どうやら、アスカは恋人同士らしく
お互い名前で呼びたいようです。
「アスカ…」
「しんじ…」
二人は見つめ合った後、
自然に手を繋ぎながら歩き始めます。
「…今日はありがとう、アスカ」
「…わたしも…本当にありがとう…」
二人の顔は、今日一番の笑顔のようです。
fin
デニム「30万HIT記念SS、お楽しみいただけましたか?」
アスカ「ま、まさかまたこのお話が出るとは思わなかったわ」(^^;
デニム「いや…続き書いてとのメールも殺到してますし」(^^;
アスカ「で、記念SSにこれが選ばれたわけね…しっかし冒頭でアタシ吹っ飛んでるわよ」(汗)
デニム「だから…前回の後書きのとおりに…」
アスカ「で、シンジに抱きかかえられたわけね…ふあ〜」(*^^*)
デニム「…もう、コメント不可能?」
アスカ「えへへ〜」(*^^*)
デニム「それでは、30万HIT記念SS。これで失礼します」(^^)
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namiko-w@axel.ocn.ne.jp
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