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幼馴染はライバル?
天気もいい平日。ともなれば学校が始まる。
学生達は制服に着替え、朝食を済まし、
用意していた勉強道具を詰め込んだかばんを背負う。
そんなどこにでもある風景。
東京のとある住宅地にある、この家に住んでいる
惣流・アスカ・ラングレーもその一人。
「それじゃパパ、ママ。いってきま〜す!」
両親に挨拶を済まし、元気よく出発する。
まず目指すのは隣の家。
そこには彼女にとって切っても切れないような
関係の人物、つまり幼馴染がいる。
いつも寝坊をするので、こうして起こしに来るのが
彼女のいつもの日課。
「シンジ〜!また遅刻するよ〜?」
パタンとドアを開けて彼女は玄関口に現れる。
「あら、アスカちゃんおはよう。もうそんな時間?」
台所で朝食を作っている女性は彼女を見て聞いてきた。
もちろんその幼馴染の母親。
街中で歩けばナンパでもされそうな綺麗な人である。
「はい。それじゃ、起こしてきますね」
靴を脱ぎ、トタトタと駈けて叩き起こすべき
相手の部屋へと向かう。
「シンジ〜!朝よ〜?」
勢いおく扉を開け、布団に寝ているであろうその人。
碇シンジを彼女はいつものような手順で起こす。
「ほぅら。起きなさいよ〜」
ユッサユッサ…まずは揺り動かしてみる。
反応はない。これで起きたのは10回に1回と低い。
続いてアスカは第二段の手段に出る。
バサリ…布団を剥ぐ。
残念ながら彼は身を丸めただけで起きてくれなかった。
普通の人なら目は覚めてくれると思うが、今寝ている
アスカの幼馴染、シンジにはあまり効果はないのである。
それでも5回に一回以上は起きてくれる。
第三の手段。
これで起きない人間はあまりいないであろうという方法。
成功すると寝ている人によっては怒るという方法。
そう、鼻を手で摘むのである。
ギュッ…
約十秒。待ってみたがシンジは首を
横にしてアスカの手を解いてしまった。
でも少し目を開けてくれたので、
あともう一歩といったところだ。
これぞ最後の手段。
アスカは寝ているシンジの耳に口を近づけた。
「シンジ…キスして起こしてあげましょうか〜?」
その言葉が彼の耳に入った瞬間。
重力が一瞬反転したかのようにシンジは飛び起きた。
その顔はタコのように真っ赤であった。
「ア、アスカ〜」
「ぷ…アハハハハ、シンジったら〜可愛いっ!」
思わず毎回笑ってしまうようなシンジのリアクションに
これまたアスカは毎回笑う。これで彼女のミッションは終了した。
「…着替えるから、出てくれる?」
「あ、はいはい…」
アスカが出て行った後も、シンジは数分の間顔が真っ赤なまま。
碇シンジ。超がつくほどの純情な少年だった。
「…アスカ、酷いじゃないか〜」
「あら、起きないのが悪いんじゃない」
しれっとアスカは答える。
「それにしても今時珍しいわね、その性格」
「ほっといてよ、もう」
そう言うとシンジはいきなり駆け出した。
恥ずかしいので耐えられなかったらしい。
「あ、こら待ちなさいよ〜」
こうなれば追いかけるのみである。
ふたりはそのまま学校へと着いた。
「…ふう、何とか間に合ったかな?」
「もう少し、早く起きてよね?」
「努力するよ…」
ふたりは同じクラスなので、
結局はいっしょに入ることになる。
「お、今日も夫婦そろってご登校やなっ!」
机に座り、元気に挨拶してきたのは
クラスメイトの鈴原トウジ。
顔を見ても分かりやすい熱血漢な少年だ。
「まったく仲がいいね、お二人さん」
その隣でビデオカメラを回しながら
挨拶してくるのは相田ケンスケ。
インテリ眼鏡に大人しい顔。
どこにでもいそうな少年である。
「あ〜あ、今朝からやな物見ちゃったわね」
「なんやと!そりゃ誰のことや!」
「アンタ以外に誰がいるっての?この筋肉馬鹿!」
勢いよく立ち上がり、突っかかってくるトウジに負け時と睨むアスカ。
アスカは毎度毎度、朝はトウジに向け悪口をたたく。
逆もありえるが、売り言葉に買い言葉。当然口喧嘩が続く。
「まあまあ、アスカ落ち着いて…」
シンジがアスカを後ろから羽交い絞めにし…
「ほら、トウジも情けないぞ?」
こっちはケンスケが止めに入る。
ときたまに起こるいつもの光景。
「あれ…またアスカに喧嘩売ってるの?鈴原!」
「げ、委員長」
トウジの振り向いた先にはクラスの委員長。
洞木ヒカリがトウジを睨みつけていた。
「いいかげんにしてよね。こう毎度毎度…」
「せ、せやかて…」
「ほら、今日日番でしょ?ちゃんと仕事してよね?」
「…ほ〜い」
しぶしぶトウジも力を抜いて黒板に向かう。
アスカとトウジが喧嘩をし、シンジとケンスケとヒカリがそれを止める。
…と、こんな光景が時たま同じように繰り返されるため、
クラスではもはや名物とも言える光景であった。
でも名物シーンはこれで終わるわけではない。
これからがさらにヒートアップするのだ。
「おっはよう〜♪」
聞くだけで思わず返事を返してしまいそうな声で
教室へ入ってきたのは綾波レイ。
少しばかり前に引っ越してきたばかりなのだが、
妙にシンジ達のグループと仲がよい。
が、それは簡単に壊れるのである。
なぜなら…
「碇君。おはよう」
「あ、おはよう、綾波」
「ねぇねぇ、数学の宿題、やってきてる?」
「うん、もちろんやってるよ」
「ちょっと分からないところがあるのよね〜。ここ、教えてくれない?」
と、こんなやり取りを見て…
「あら、こんな問題も解けないの?あっきれた」
問題集をひったくって文句を言い出す人…アスカ。
「あ、こら。返してよ〜」
「あたしが教えてあげるわ。これくらい」
「今、碇君に教えて貰おうとしているんだからいいわよ」
「効率いいでしょ?手早く教えてあげるわよ?シンジより」
「…たしかにアスカのほうが成績いいからね。綾波。教えてもらいなよ」
「う、うん…はうう…」
本当に残念そうに頭をうなだれる綾波。
それを心の中で喜んでいるアスカ。
そしてふたりの表向きな冷戦に気付かないシンジ。
こんなシチュエーションはもはやお決まりで、
クラスの生徒は内心笑いをこらえて行く末を案じている。
いや、本当に単に面白がっているだけかもしれない。
と、最後の役者が登場するのは決まって次の瞬間…
「は〜い、みんな席に着いてね…あらあら、またシンちゃん達?」
「あ、葛城先生…」
「いいわ、続けていいわよ〜?」
「「い、いえ、結構です」」
パッと一瞬で自分の席に戻るアスカとレイ。
そして頭の上に10tあるかもしれない?マークを乗せるシンジ。
クラスの生徒はこの光景に笑いを堪えるのに必死になる。
と、これがHLの始まる直前の出来事、このクラスだけは
この時間がかなり長く感じるとか…
「は〜い、それじゃ、今日はこれまで!」
担任、ミサトの一言で一日の授業が終わる。
どの学校でもある、事実ようやく家に帰れる時。
しかし、大半の生徒はまだ学校に残る。
そう、部活があるのだ。
と、当然シンジとアスカも部活に入っている。
ここでも名物痴話げんかが見れるかと思えばそうでもない。
放課後となり、訳5分経った瞬間。このクラスの生徒は数名を除いて無言で帰る。
なぜなら…とんでもなく空気が重くなるからである。
そのため帰宅部の生徒はそそくさと帰る。それほどその場にいたくないのだ。
その原因というと…
「シンジ、いくわよ…」
「うん」
カバンを背負い、一直線に部室へ向かう二人。
レイは違う部活に入っているため、挨拶を二人に済まして教室を出ている。
実はレイがこの二人に話を済ませた瞬間にそれが起きるのである。
霊感の強い人には二人の周りになにやらオーラが見えるとか…
「「失礼しま〜す」」
貼りのある声とともに部室に現れるシンジとアスカ。
更衣室で着替え、準備を済ますとさらに二人の目は真剣になる。
それはまさに今から命を賭けて落下してくる敵を…いやいや。
とにかく二人はお互いに向き合い、構えを取った…そして。
「「やぁ〜っ!」」
思わず一歩ひいてしまいそうな大きな声をあげ、
二人は素早く交差した。
「面あり!碇!」
と、同時に回りの部員も稽古を始めた。
そう、二人は剣道部に所属していた。
それが二人とも父親が有段者なためかは分からないが。
もちろん本人達もかなり強い。他の部員では相手にならない。
放課後教室からこの部室まで。そして部活内。
二人の殺気ともいえるほど強いオーラが周りに浸透してしまうのである。
この空気は部活が終わるまで続くため、途中で息が止まりそうになる生徒もいるとか…
これはもはや怪奇現象である。
「くやし〜…これでまた引き分けね〜」
帰り道。アスカの悔しそうな声があたりに響く。
シンジが負けたときはシンジの声が木霊する。
二人の剣道に対する情熱は半端ではなかった。
「シンジ…明日はぜ〜ったい負けないからね」
「僕も負ける気はしないよ?今のうちにいい訳考えてたら?」
「言ったわね〜」
フッフッフと二人して笑う二人の隣を歩く通行人は驚いて遠ざかる。
こんな調子で幼馴染の二人は奇妙な毎日を送る。
ただいまの成績…互いに570勝570敗10引け。
果たして決着は着くのだろうか?それは背中の竹刀もわからない。
fin
アスカ「なんか初めて強引に作品書いてない?」
デニム「…あははは」(^^;
アスカ「学園モノかと思えば剣道〜?」
デニム「すいません。なんにも思いつきませんでした」m(_ _)m
アスカ「はあ…で、もちろん最後に笑うのは私よね?」
デニム「どうでしょう?予定ありません」
アスカ「一周年記念のSSなのに内容薄いわよ」(^^;
デニム・パウエルへの感想、意見などはこちらへ
namiko-w@axel.ocn.ne.jp
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