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それからの二人
どこまでも続く青い海。一人の青年がそれを眺めていた。年齢は20歳くらいだろうか?
黒髪で黒目。その目は澄み切っていた。
「…ここへ来るのも久しぶりだな」
と、少年の足元にボールが転がってきた。
「すいませ〜ん、取ってくれますか〜?」
拾って前を見ると、小学生が手を振っている。どうやら、彼のものらしい。
その子が近くに来ると、青年はボールを渡した。
「ありがとう、お兄さん」
その子は笑顔を見せ、親の所へ走っていった。
青年はその子が両親のもとへ着くのを確認すると、その場を後にした。
「親…か。もう戻れないのかい、父さん…僕はもう憎んではいないよ?」
青年の呟きは誰も聞いてはいなかった。
第三新東京市。青年はそこに住んでいた。
「ただいま〜」
「おかえり〜」
出迎えたのは栗毛の目立つ女性。目は青く、肌は白い。一言で済ませば美人である。
「どこ行ってたの?」
「たんなる散歩だよ」
「そう…もうお昼だし、ご飯にしようか?」
「うん…僕が作ろうか?」
「いいわよ…ずっとシンジが作ってたんだしね」
「わかったよ」
「じゃ、待っててね」
女性がエプロンを着、料理を作っていく。
「…思えば、することが減ったな」
青年はテレビを見て待つことにした。
「出来たわよ」
しばらくして、女性が料理を運んできた。
「座ろうか?」
「ええ」
二人はソファーに座り、食事を済ませた。
「あれから、もうどれくらい経つのかしら?」
しばらくして、女性は頭を少し上げ、昔の事を思い出す。
その少年と少女…碇シンジと惣流・アスカ・ラングレーは数年前、正体不明の敵、
使徒を倒すために人造人間エヴァンゲリオンに乗り、当時14歳で人類の為に戦っていた。
「あれから…5年か。今から思えば、悪夢だったのかな?」
「でも…その悪夢の中にも、得た物があると思うわ」
「アスカ…そうだね」
二人は少し視線を落とす。
「それにしても…いろんなことがあったわね」
「うん」
「始めてあったのは、大きな船だったな。たしか…」
「オーヴァー・ザ・レインボウ。あの時、あなたの第一印象は冴えない男だったわ」
「はは、そうかな」
「もう、なんで否定しないの?」
「自分でもそう思うからさ」
「ふう…」
アスカはため息をつく。シンジは今となっては冴えない男どころではない。
いや、14歳のころもけっこう女子からは人気が高かった。
「なんでため息をつくの?」
「さあ、何ででしょうか…始めて、使徒と戦った時、強引にシンジを弐号機に連れ込んだわね」
「…やっぱ恥ずかしかったな」
シンジはアスカの予備のスーツを着たところを思い出す。
「なによう。別にいいじゃない」
「まあ、いいけど…初戦は何とか勝てたってくらいだね」
「そうよね。B型装備で海で戦闘ですもんね…でも、次の使徒は協力して倒したわね」
この使徒は二体に分離し、弱点のコアを同時破壊しなければならなかった。
そのため、シンジとアスカはユニゾン特訓を一週間でこなした。
「そうだね。それにしても、厳しかったなあ。あの特訓」
「まあ、今は楽勝でしょ?」
「今は、ね。やっぱ中学生の時はきつかったよ」
「でも、使徒をちゃんと倒せたじゃない」
「最後は…なさけなかったけど」
使徒は倒したが、シンジはこの時着地を失敗してしまった。
「ま、まあ…そこは置いといて…次の使徒の戦い、よくあんな無茶したわよね」
「まあ、無我夢中だったから」
D型装備をした弐号機は火口に下り、使徒を殲滅したが、使徒は死ぬ間際に
弐号機のケーブルを切った。シンジはアスカを助けるためにマグマへ飛び込んだのだ。
「まあ、格好よかったけどね」
「ん、なに?」
「なんでもない。次の使徒の時は参ったわ。本部が停電するんだもんね」
「…あの時、道に迷ったよね」
「あ、あれはもう時効じゃない」
「まあ、いいよ…落下する使徒の時、僕は遺書考えてたんだよ」
「へえ。なんて?」
「父さんにね。いろいろと」
「ふ〜ん…まあ、いいわ。シンジが消えたときはどうしようかと思っちゃった。どうやって帰ってきたの?」
「よく覚えてないんだ。ただ、誰かが助けてくれた。そう感じるよ」
「そう。不思議ね…そういえば鈴原は…どうしてる?」
鈴原トウジ。エヴァンゲリオンフォースチルドレン。参号機に乗るはずだったが、
使徒に乗っ取られ、参号機は暴走した初号機によって破壊され、トウジは片足を無くした。
「あの後、ずいぶん経ってから会いに行って謝ったら…殴られたよ」
「謝っても…許してくれなかったの?」
「いや…〈なんで謝るんだ〉ってね…〈お前は何も悪い事はしていない〉って…
でも、〈僕は…自分で自分が許せないんだ〉…そういったら殴られた」
「…あいつらしいね」
「そうだね。僕はあの時、とても勇気付けられたよ。やっぱ、親友っていいね」
「そうね、私もヒカリがいたから…実はねあたし、エヴァを下ろされてからしばらくはヒカリの所にいたの」
「そうなんだ」
「…でも、その後は何しているか、自分でもわからなかった。ハッキリと覚えてるのは、
海にいたときからだったわ…あの時、ママに会った気がするの」
「お母さんに?」
「うん…ずっと見守ってくれていたんだって…でも」
アスカは頭を下げた。
「でも、また負けちゃったんだ…そこから少しまた分からなくなって…
気が付いたら、目の前にシンジがいて…首をしめてた」
「僕は…本当にすまなかったと思ってるんだ…あの時…以前に話したけど、
僕はアスカを助けられなかった。僕が初号機で出た時には…弐号機は原形をとどめてなかった」
シンジは手で頭を抑えた。
「気が付いたら、僕とアスカだけだった。僕は…何も出来なかった。
君を…楽にしようとして…でも、出来なくて…なのに…君は…」
シンジはその光景を思い出して目を閉じる。
「ええ…でもあたしはあなたを許した…それに、そんなこと、もういいのよ」
アスカはシンジの肩を抱き、引き寄せる。
「ねえ…聞こえる?あたしの鼓動…昔のあたしは機械みたいだったかもしれない。
でも、それを直してくれたのが…あなただった」
「アスカ…」
「ねえ、シンジ…もういいんだからね?もう頑張らなくてもいいんだからさ…私が…一生いっしょにいるから」
「ア、アスカ…それって」
「い、いくら超鈍感なアンタでも…わかるでしょ?」
アスカは顔を真っ赤にして頭を下げたままだ。
「なんで…僕を?」
「分からない?好きでなきゃ、どうしてキスしたりするの?好きでなきゃ、
どうして殺されそうになって許せるの?好きでなきゃ…好きじゃなきゃ、
ここにいる理由なんか無いじゃない…5年も嫌いな人と…いるわけないじゃない」
「…ごめん」
「…謝らないでよ」
「…でも、僕はまだ応えられない」
「…どうして?」
「僕は…君を守りたい。絶対にもう傷つけたくないんだ…今は、まだ自分に自信が持てないんだ。少し…待ってくれるかな?」
シンジは笑顔を見せる。その笑顔に、アスカも笑顔で返す。
「…うん。ずっと待ってるから。今度は…」
「わかってるよ。今度は僕のほうからプロポーズをするよ」
「シンジ…ありがとう…大好き」
アスカはシンジの肩に頭を預けた。
「ん…シンジ?」
アスカが起きた時、シンジはすでにはいなく、自分には毛布がかかっている。
「寝ちゃったんだ…ん?ってことは…夢?」
アスカは一瞬そう思う。
「そう…なのかな?」
いまいち自分でわからない。
「まあ、あたしがあんな事…言えるわけないか」
ため息をつく。どうもすっきりしない。
「でも…夢じゃないわよね」
根拠は無いが、そう断言する。
「シンジは…どこいったんだろう?」
あたりを見回しても、てんで変わった様子は無い。
「…五時少し回ったくらいか」
時間を見ると、シンジは買い物に行っている時間と分かる。
「ただいま」
ちょうど、シンジが帰ってきたようだ。
「あ、おかえり」
「ねえ、アスカ。話があるんだけど」
「何?」
「とりあえず、座って」
アスカは言われたとおり、ソファーに座る。
「実は…アメリカに行こうと思うんだ」
「え?」
アスカは自分の耳を疑った。
「…どうして?」
「…昼に話したけど、僕はまだ弱いんだ。とにかく、強くなって…君を守りたいんだ。だから…」
シンジはアスカを見て言葉を止めた。アスカが涙を流している。
「な…んでよ」
「ア、アスカ?」
「だからって…置いていく事無いよ…一人で背負い込まないでよ…あたしだって…シンジの役に立ちたいのに…ねえ、連れて…行ってよ」
アスカはシンジの袖を強くつかんだ。
「ごめん…それは無理だよ。そうしたら、自分で何も出来なくなっちゃうと思うんだ。僕は…きっと帰ってくるから…待ってて…」
アスカは、シンジの目を見て涙を止める。シンジの目は決意に満ちていた。
「…あたしを泣かせるなんて…いい度胸してるじゃない…いい?きっと帰ってくるのよ」
「…約束するよ」
「いつ出るの?」
「一週間後くらいかな?」
「じゃあ、後一週間はシンジが料理作ってよね」
「え、なんで?」
「それぐらいわかりなさいよね、馬鹿シンジ。ちょっとお風呂入ってくるから、夕飯頼んだわよ」
アスカはそう言って脱衣所へ入っていった。
「…あの調子なら、大丈夫かな?」
シンジは夕飯の支度に入った。
「シンジ〜、上がったわよ」
やがて、お風呂からアスカが出てきた。
「あ、ちょうど出来たよ」
シンジは食器を並べている。ベストタイミングとはよく言ったものだ。
「じゃ、いっただっきま〜す」
「いただきます」
「…ねえ、シンジ」
食べ初めて、アスカが喋りだした。
「ん、何?」
「お父さんとは…上手くいきそう?」
「どうかな…」
「じゃあ、いまだにまともに話が出来てないの?」
「…そうなるね」
「そりゃあ、父親として息子にしたことは自分で許せないとは思うけどさ…その息子がいいって思ってんだから」
「…しょうがないよ」
「…のんきね」
「そうかな?」
「そうかもね…アメリカ行きは話したの?」
「ううん…話しても、来てくれないと思う」
「シンジ…また逃げてない?」
「やっぱ、そう思う?」
「そりゃあね。このまま逃げつづけたら、私だって待てないわよ」
「…それはきついね」
「あたしもいっしょに話してあげましょうか?弱虫君」
「…………」
「あ、怒った?」
どうやら、単なるからかいと気付いているのだろうか、シンジは怒ってはいないようだ。
「そうだね。僕から話すから、アスカはいいよ」
「分かればよろしい」
「「…はははは」」
何がおかしいかはわからない。でも、お互いの顔を見るとなぜか笑ってしまった。
「じゃあ、もう寝ようか」
「そうね、おやすみ」
「おやすみ」
二人は、それぞれ眠りについた。
次の日、シンジは第三新東京市のとあるぼろいマンションに来ていた。
「父さん、いる?」
シンジは少し大きな声で呼びかけた。しばらくすると扉が開いた。
顔を出したのはひげを生やした中年の男性だった。シンジの父である。
一瞬、驚きの表情を見せたが、すぐにいつもの無愛想な顔に戻った。
「シンジか。入れ」
「うん」
シンジは家の中に入った。外見と同じく、中も汚い部屋だった。
いや、汚れてはいないが所々傷や壊れている個所があるのだ。
「で、なんの用だ?」
シンジの父…ゲンドウはお茶をテーブルに置き、ソファーに腰掛ける。
シンジも向かいのソファーに座る。
「僕、アメリカに行こうかと思ってるんだ」
「…そうか」
ゲンドウはの応えはそれだけだった。彼はあまり言葉を発しない。
聞いてないように思えるが、シンジは単なる言葉でのコミュニケーションが
苦手というのを知っている。もちろん、息子だから分かる事だ。シンジはかまわず続けた。
「僕は…逃げてばかりだった。でも、本当に強くなりたいんだ…そのためには、
何かをしなくちゃいけない。それが何かを見つけるのが…今の僕のする事だと思うんだ」
「…シンジ」
「何?」
「…なぜ、私のところまでわざわざ言いに来たのだ?」
「あたりまえじゃないか…たった一人の父親じゃないか」
「父親…か」
ゲンドウは立ち上がり、カーテンを開けて外を見つめ…口を開いた。
「シンジ…私はもう父親ではない。いまでも所長という肩書きがあるが、
何も無い年老いたただの男だ。私が5年前、何のためにお前にエヴァに
乗せたかは知ってるだろう?私は…そのために何もかも利用し、捨ててきた。
その中に…息子まで入れるのを、誰が父親と認めようか」
「…ここにいるじゃないか」
シンジの言葉にゲンドウはこちらに体を向けた。
「シンジ…許してくれるのか?こんな哀れで救いようの無い男を…」
「…そう言ってるじゃないか」
「…シンジ、ありがとう」
ゲンドウは笑顔を見せた。
「シンジ…一つ聞きたいのだが…」
「何?」
「式はいつだ?」
「ぶッ!!」
シンジは飲んでいたお茶を噴出した。
「シンジ、汚いぞ」
「げ、ゲホッ…ゲホ…い、いきなり何言うんだよう」
シンジから言えば、突然なので驚いてしまう。
「何だ、まだ決まってないのか?」
「い、いや…まだそこまでは」
「考えてないのか?」
「…アスカがよければね」
「それは大丈夫だろう。後はお前の心意気次第だ」
「…なんでそこまで言えるの?」
やはり、疑問というべきか…シンジは聞いた。
「お前よりどれだけ長く生きてると思ってるのだ。そういうものだよ」
「ふ〜ん」
無感動で返事をする。
「シンジ…尻に敷かれるが、いいのか?」
「ま、まあ…諦めてるし」
「そうか…運命かも知れんな」
「え?聞こえないよ」
「なんでもない。とにかく、決まったら呼んでくれるのか?」
「もちろん」
「そうか…用はもういいのか?」
「うん…ありがとう。話が出来て…嬉しかった」
「…私もだ」
「じゃあ、また…」
「ああ…」
シンジは部屋を出て行った。
「ユイ…シンジは本当に立派になったぞ」
ゲンドウは帰らぬ妻に囁いた。
その夜、シンジは家に帰った。玄関ではアスカが出迎えてくれた。
「…お帰り」
「ただいま」
「…どうだった?」
「うん。ようやく、まともに話せるようになったよ。後少しだと思うよ」
「そう、よかった…ねえ、シンジ」
「ん、何?」
「…ううん。なんでもない」
「そう?じゃあ、もう寝るよ。アスカも早く眠りなよ。最近、僕が帰ってくるときいつも起きてるでしょ?疲れがたまるよ?」
「ううん。苦じゃないわ。シンジの笑顔が見たいから」
「…ありがとう。僕もアスカの笑顔が見たいよ」
シンジはとびっきりの笑顔を見せた。それに応え、アスカも笑顔を送った。
《一週間後》
シンジの旅立ちを、かつての親友、仲間、大人たちが集まってくれた。
「シンジ、がんばれよ〜」
「向こうに行ったら、手紙よこせよ〜」
「アスカのことは任せてね〜」
みんな、それぞれ激励の言葉をかけてくれている。
「…こんなに集めなくてもいいのに」
アスカはぼやく。
「…みんな、ありがとう」
シンジは大変嬉しかった。
「碇君」
みんなの一歩前に一人の少女が歩み出た。髪が浅い水色に見える少女…綾波レイ。
かつていっしょに使徒撃退の為に戦った、仲間。
「…頑張ってね」
レイは笑顔を見せた…レイはシンジの母親、碇ユイの遺伝子と第2使徒の遺伝子を
組み合わせて生まれた、いわばクローンだった。そのためか、彼女に表情の変化は
あまり無かった。しかし、シンジやアスカ達と出会い、今となっては人間そのものになっている。
「…ありがとう。綾波はこの先どうするの?」
「…わからない。でも、分からないから、人生は楽しいんじゃないかしら?」
「…そうだね」
「はいはい、二人で盛り上がらない」
アスカが二人の間に割り込んできた。
「…アスカ、妬いてるの?」
「だ、誰が…」
「妬いてるんでしょ?」
「…うん」
「アスカ、変わったわね。碇君のおかげかしら?」
「…アンタほどじゃないわよ」
アスカは落胆したように頭を下げた。シンジは照れながら頬を掻いている。
「あたしからは終わり。早く帰ってきてあげてね。アスカが悲しむから」
「…それはないわよ、レイ。あたしはシンジを信じてるから」
「アスカ…」
「シンジ…」
「お〜い、そこ!!いつまで見つめあってんのよ!!」
誰が喋ったのかは分からなかったが…おそらくミサトだろう。二人は
一瞬ビクッとしてみんなのほうを見て少し顔を赤らめた。
「…みんな〜、行ってくるからね〜」
シンジが手を振ると、みんなも手を振り、応えてくれた。シンジはエレベーターを降りていった。
「…シンジ」
シンジは後ろを振り向いた。降りた先にゲンドウがいる。
「…父さん」
「…頑張ってこい」
「…はいっ!!」
親子の対面は少しだったが、お互いの気持ちは分かっている。
…十分後、シンジを乗せた飛行機はアメリカへ飛んだ。
「…行っちゃったね」
レイがアスカに囁いた。
「平気よ。帰ってくるって…信じてるもん」
みんな、飛行機が見えなくなるまで、見送った。…と、誰かの携帯が鳴った。
「あ、ごめんなさい」
携帯はリツコのだった。リツコは迷惑がかからないよう、角を曲がり、話し始めた。
「はい、赤木です…はい…はい…なんですってっ!!…わかりました、そちらに伺います」
リツコは携帯を切り、みんなのところへ戻ろうとした。
「おや?リッちゃん。どうした、そんなに慌てて?」
リツコを止めたのは男性だった…加持リョウジ。元ネルフの特殊観察部所属。銃弾を受け、
重傷だったが、一命を取り止めていた。現在はミサトと結婚しており、二人で暮らしている。
「あ、リョウちゃん。碇所長知らない?」
「所長か?それなら、さっきエレベーターの下にいたが…」
「ありがと」
それだけ言うとリツコは走っていった。
「…なんなんだ?」
加持は首をかしげた。一方、リツコはゲンドウのところについた。
「碇所長っ!!」
「ん、なんだね?赤木君」
「はぁ…はぁ…嬉しい知らせです。たったいま、凍結中の初号機から…奥さんが…出てきたそうです」
「!!…それは本当か」
「それを確かめに第三病院に行くんです。来ますか?」
「…もちろん同行しよう」
1年後、シンジは帰ってきた。たくましい青年として。もう彼には昔の弱弱しさはなかった。
彼の帰りを知り、みんなは小さなパーティを開いてくれた。
「「「「「「「「「「お帰りなさ〜い」」」」」」」」」」
「…みんな、ただいまっ!!」
パーティはしばらく続き、シンジの前に一人の女性が現れた。
「…母さん?」
「シンジ。たくましくなったわね。ホント、あえて嬉しかったわ」
「…僕もだよ。母さん、父さんからは聞いた?」
「ええ…最初は怒ったけど…シンジが許してるんですものね。私も許したのよ」
「シンジ、よく帰ってきてくれた」
後ろから、ゲンドウが出てきた。
「父さん…ただいま」
「あ、それとシンジ…特別パーティをもう一つ用意しているのだが、どうだ?アスカ君は了承しているぞ」
「…じゃあ、来月までには」
「わかった。手配しておこう」
「…ありがとう。また、後でね」
シンジは他の皆のところへ行った。
「…あなた、唐突過ぎません?」
「何、早ければよいに越した事はない。あの二人には遅すぎるくらいさ」
「ふふ、あなたが言うにはそうなんでしょうね」
パーティは、一晩続いた。
《そして、一ヵ月後》
みんな、この会場に来ていた。世界を救った英雄…壊れた世界を直した、二人の英雄。その晴れ舞台を見に。
「それでは、新郎、新婦の入場です」
司会の声のもと、シンジとアスカはバージンロードを歩いて行く。
「指輪の交換を」
シンジはアスカの指へ、アスカはシンジの指へ、それぞれはめた。
「それでは、誓いの口付けを」
二人は、唇を重ねた。二人に惜しみない拍手が送られる。
「アスカ、あえて本当に嬉しかった」
「シンジ、あたしもよ」
…式は大成功に終わった。二人はこの先、お互いを支えあって生きていく事でしょう。
fin
デニム「短編を始めて書いてみました、どうでしょうか?」
アスカ「いいんじゃないの?最後がちょっと変な気がきたけど」
デニム「まあ、気にしないで下さい。私もああいうの書いてるとだんだん恥ずかしくなる物で」(^^;
アスカ「…あんなんで恥ずかしがってたらノロケ小説なんか書けないわよ?」
デニム「…まあ、頑張ります」
アスカ「それにしても、一話構成だから今までより少し長かったわね」
デニム「ええ。仕方がないんじゃないですか?短編でまとめるとこうなっちゃうのは…」
アスカ「まあ、素人が見ていいほうじゃないの?」
デニム「…そうなるでしょうね。ただ、ラストのシーンは他の自分の作品のエピローグに使うことになるでしょうね、多少違くても」
アスカ「そうなると、つまんなくなるわね」
デニム「そうならないために他の作品には続きを書きます」
アスカ「たとえば?」
デニム「詳しくは作品が出来てからね」
アスカ「…教えなさい」
アスカ「まあ、気長に練習したらいつかはプロ並になるんじゃない?」
デニム「…どうでしょうか…それでは、少し長い後書きも終わりです。それではまた別の作品で会いましょう」
アスカ「あ、話そらさないでよ…まいっか。じゃ、またね。感想、待ってるわよっ!!」
デニム・パウエルへの感想、意見などはこちらへ
namiko-w@axel.ocn.ne.jp
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