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合
わ せ 鏡
「シンクロ率400%突破!!」
この後、暴走した初号機は無事に使徒を撃破した。
―いや、「無事」とは言い難いかもしれない。
「シンジ君を…還してよォ………。」
何せ、パイロットのシンジがLCLの中に取り込まれてしまったのだから。
この事件から数日、アスカはいつもの元気を無くしていた。
「…………。」
「アスカ、宿題、やった?」
「…………。」
「アスカ、おいしいケーキの店があるんだけど、行かない?」
「…………。」
学校に行っても、何処に行ってもこんな調子だった。
ネルフでももちろん、家でも、アスカは殆ど誰とも話さなかった。
「………シンジ…。」
ケンカ友達というのは居なくなって見ると静かで退屈なものである。
まるでアスカの周りから一斉に火が消えたようだった。
数日後、リツコからの呼び出しで急遽シンクロテストをすることになった。
「レイはほぼ正常値ね。問題ないわ……。アスカは………。」
数値を見てリツコは表情を曇らせる。
「…結構下がってるわね…何かあったの?」
「何かあったのって…わかんないの!?シンジが死んだのよ!?
それで平気でいろって言う方がどうかしてるわ!」
「それはそうだけど、そんな事でいちいちシンクロ率落としてちゃ、」
「そんな事ですってぇ!?何よ!!数字でしか人の価値を判断できない
女が偉そうな事を言うんじゃないわよ!!」
テスト終了後、ミーティングにも参加せずにアスカは駆け出した。
「…知らなかったわ、シンジ君があの子の中でそんなに大きな存在だったなんて。」
「アンタ何言ってんのよ。クラスメイトや友達が死んだのに平然と出来る人が
いるとでも思ってるの?」
不機嫌な声のミサトが無表情のリツコに言った。
「わかってるけど、その程度でいちいち成績悪くされたら私だって不安になるわ。」
「…アンタ最低ね。少なくとも私達は”家族”だったわ。
”家族”が一人減ったのよ!?永遠に会えないのよ!?それを”その程度”で
片付けるの!?司令と交わって頭おかしくなったんじゃないの!?」
「!!」
一瞬、リツコの顔にも怒りが見えた。
だがミサトはお構いなしに続ける。
「あの二人はね、血こそ繋がってないけど、ロクに親に愛情を注いでもらっていない、
ここに来るまでは友達すら出来なかった…それも私達ネルフ職員の都合で無理矢理
普通の子供の幸せから遠ざけられた子達なのよ!!
ここに来てようやく境遇の似た、合わせ鏡のような友達、いわば戦友と出会えたのよ!!
あの子の気持ちも理解しないで、よくそんなことが言えるわね!!!
アンタは何でもかんでも男と女絡みの話に繋げるけど、私から言わせてもらえば今どきの
ガキだってそんな単純な思考はしないわ!アンタは色ボケしすぎよ。」
「…司令の侮辱は許さないわ。」
「司令の話じゃない!アンタの話!!!
…私も帰らせてもらうわ。あの子には、一分一秒でも傍にいてやれる人が必要なのよ。」
踵を返して出て行こうとするミサトを誰一人として止めようとはしなかった。
皆、アスカとミサトの心の叫びを痛いほどに受け止めていたからだろう。
ミサトが家に帰ると、アスカは既に布団に潜っていた。
確かにリツコの言う事もわからないでも無い。
今は何があってもおかしくない状態だ。
だが、とても悔しかったのだ。
自分と共に戦ったシンジが、気にも留められずに忘れられていくのが。
そして、まるで使い捨ての存在のようにリツコに言われた事が。
だからアスカは感情を爆発させた。
そしてそれを理解しようとしなかったからミサトも怒った。
ミサトはセカンドインパクトの時の肉親の死でいくらか免疫はついていた。
が、アスカにとっては初めて出来た友達、自分と境遇の似た人間。
だから辛い事も何もかも、ちょっとシンジと接していれば忘れる事が出来た。
友達といる時の楽しさは誰だって覚えがある。
自分を愛してくれている親といる時よりも楽しいものだ。
少なくともその瞬間だけは嫌な事を忘れる事が出来るのだ。
それはその日体験した事も、昔のトラウマも全て…。
その晩、アスカは奇妙な夢を見た。
鏡の夢だった。
不思議な事に鏡の中には何も映っていない。
自分は鏡に向かって何かを言っている。だがそれはなんなのか理解できない。
すると、鏡は何時の間にか姿を変えてシンジの姿になっていた。
ともすると、今度は自分が鏡になっている。
奇妙な感覚だ。シンジは自分に向かって何かを言っている。
やはりなんなのか理解できない。
そこで目が覚めた。
鏡は本来自分の姿を映す物。
だが、鏡の世界は全てが逆になる。
鏡というものは自分を映す道具であると共に、自分と対を成す存在を
映す道具なのだと。
アスカは鏡の夢をそう解釈した。
そして、何故かアスカはシンジが生きていると心の奥底で思い始めた。
「…早く帰って来てね………。」
アスカの思いが通じたのか、はたまた夢は予知夢だったのか、
数日後、シンジは無事にサルベージされた。
End
ども、ナギです。
あうー、何かおかしいなぁ……いつもバカやってる所為か、
たまにこんなの書くと支離滅裂。何が書きたいのかワカラン(汗)
まぁ、あれです。要はシンジとアスカの関係は”戦友”っつーわけです(←そのまんま)
私としてはあの二人が”ラブラブ”になるのはちょっち想像できませんでしたので(笑)
ホント、シンジをそのままひっくり返したのがアスカだとイメージが固まってしまったので…
ですから最近は”カップル”より”コンビ”で書くほうが楽になってるんですねぇ…
つーわけで失礼いたします(-_-;)
デニム「ナギさんから以前お渡しした残暑見舞いのお返しとしてSSをいただきました。ありがとうございます」(^^)
アスカ「…そりゃあ、好きな人が消えれば誰だって沈むわよ」
デニム「まあ、最後には戻ってきましたし…」
アスカ「そうね…でもっ!その後は?その後はどうしたってのよっ!」
デニム「…アスカ、人の耳元で大声出さないで」(^^;
アスカ「あ、ごめん…最近意味ありげで終了〜ってSSは久しぶりに見たからね」
デニム「…そうですか?」
アスカ「だって…最近、アンタのろけばっか書いてるじゃん…短編は」
デニム「うっ…」(^^;
アスカ「あ、このSSものろけ…」
デニム「ちょっとっ!新作の公表はまだ伏せておきなさいってっ!」
アスカ「ちぇ〜…」
ナギさんの感想はこちらにお願いします
xiaoryu@k6.dion.ne.jp
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